【謎のUSA製ムスタング】1982年に生産終了したはずなのに?80年代Fenderの空白期に生まれた一本を考察する

お疲れ様です。タキタロウです。

僕は現在、少し変わったFender Mustang(ムスタング)を所有しています。

一見すると、1970年代後半によく見られるラージヘッドのUSA製ムスタング。

ところが、細かく見ていくと何かがおかしい。

ネックプレートにはEシリアルが刻印されているのに、ボディやパーツには1970年代後半の特徴がある。さらに、1960年代風の仕様まで混ざっているんです。

しかも、調べていくうちに1984年製、さらには1988年製とされる個体まで見つかってしまいました。

ムスタングは1982年に一度生産終了したはずなのに、これは一体どういうことなのか?

今回は、僕が所有する謎のUSA製ムスタングについて、実機の仕様、1980年代のFenderの歴史、当時の日本向けモデルなどを手掛かりに、その正体を考察していきます。

最初にお伝えしておくと、この記事で製造年の確定には至っていません。

ただ、調べれば調べるほど、このギターが生まれた時代の面白さが見えてきました。

なお、以下には僕自身の推測や仮説も含まれます。確認できた仕様や資料と、そこから考えた可能性は区別して紹介します。

Table of Contents

僕が所有する謎のUSA製ムスタング

まずは、今回の主役となるムスタングを紹介します。

このギターは、東京・新大久保にあるTC楽器で購入しました。

購入価格は22万円。

製造年代は1980年代、ネックとボディはUSA製と推定されています。

ただし、正確な製造年は分かっていません。

基本スペック

項目所有個体の仕様
モデルFender Mustang
製造国USA製と推定
製造年代1980年代と推定
ボディアッシュ
ネックメイプル
指板ローズウッド
ヘッドラージヘッド
ネックシェイプ太めのU~Cシェイプに近い印象
ナット幅約41.7mm
指板ラジアス7.25インチと推定
フレット細めのヴィンテージタイプ
重量3.59kg
付属品USA製表記のあるFenderハードケース
購入価格22万円

まず特徴的なのは、ネックがかなり太いことです。

僕がこれまで触れてきたムスタングの中でも、かなりがっしりとした握り心地です。

ナット幅は約41.7mm。

近年の細身のムスタングをイメージして触ると、少し驚くかもしれません。

重量も3.59kgと、ムスタングとしてはやや重めです。

ただ、アッシュボディということを考えれば、それほど不自然な重量ではないと思います。

そして、このギターの最大の特徴はスペック表に書ききれない部分にあります。

年代ごとの仕様が、妙に混ざっているんです。

このムスタング、何かがおかしい

最初に違和感を覚えたのは、シリアルナンバーでした。

そこからヘッド、ボディ、フレット、ノブなどを確認していくと、次々と疑問が出てきました。

① ネックプレートにEシリアルがある

僕のムスタングのシリアルナンバーは、

E840214

です。

ネックプレートにはFマークがあり、そこにEから始まる6桁の番号が刻印されています。

1970年代後半の一般的なムスタングであれば、ヘッド側にSシリアルが刻印された個体をよく見かけます。

ところが、このギターはネックプレートにEシリアル。

この時点で、単純に1970年代後半のムスタングと考えるのは難しくなります。

ただし、古いFenderのシリアルナンバーは必ずしも製造年と一対一で対応するわけではありません。

この番号だけで1988年製と断定することもできない、というのが今回の難しいところです。

② ラージヘッドにMade in USA表記

ヘッドは1970年代らしいラージヘッド。

表側には「Made in USA」の表記があります。

さらに、ストリングリテーナーは2個。

ペグはFマーク入りで、ボタンもクローム製です。

こうした特徴は1970年代後半のUSA製ムスタングを思わせます。

しかし、ほかの部分まで確認すると、同時期の一般的な仕様とは一致しません。

③ ボディコンターが浅い

ボディ裏側のコンター加工は浅めです。

これは1970年代後半のムスタングに見られる特徴に近いものです。

1960年代のムスタングをそのまま復刻したような仕様ではありません。

④ ノブが1960年代風

一方、ボリュームとトーンのノブは、数字が刻まれたストラトキャスター風のタイプではありません。

1960年代のムスタングを思わせる、数字のないノブが付いています。

1970年代後半らしいボディに、1960年代風のノブ。

この組み合わせも気になります。

⑤ フレットが細い

さらに、フレットが細めです。

僕が所有している2012年製American Standard Telecasterと比較すると、違いがよく分かります。

1970年代後半のムスタングには、比較的太いフレットが使われている個体もあります。

ところが、このムスタングにはヴィンテージタイプを思わせる細いフレットが打たれています。

⑥ トレモロプレートにはパテントナンバー

トレモロプレートには特許番号の刻印があります。

これも年代を考える上で気になるポイントです。

初期のムスタングには特許番号のないプレートが使われていた時期があり、その後、刻印入りの仕様が登場します。

つまり、プレートだけを見ても、特定の年代に簡単には絞れません。

違和感を整理すると

確認した部分所有個体の特徴
シリアルネックプレートのE840214
ヘッドラージヘッド
製造国表記Made in USA
ペグクロームボタンのFキー
ストリングリテーナー2個
ボディコンター浅い
ノブ1960年代風
フレット細め
トレモロプレートパテントナンバーあり

要するに、1960年代・1970年代後半・1980年代の特徴が混在しているように見えるんです。

後年の改造でこうなった可能性も考えられます。

しかし、購入店で確認してもらった限りでは、大規模なパーツ交換を示す明確な痕跡は見つかっていません。

では、なぜこんな個体が存在するのでしょうか。

1980年代のFenderは、会社そのものが激動期だった

この謎を考える上で欠かせないのが、1980年代前半のFenderの歴史です。

実はこの時期、Fenderは大きな転換点を迎えていました。

CBS期末期と品質問題

Fenderは1965年にCBS傘下に入りました。

その後、1970年代後半になると、品質面への批判やブランドイメージの低下が問題になっていきます。

もちろん、CBS期のギターがすべて悪いわけではありません。

僕自身、この時代のギターには魅力があると思っています。

ただ、会社として立て直しが必要な状況だったことは、1980年代のFenderを考える上で重要です。

1981年、ビル・シュルツとダン・スミスが参加

1981年頃、Fenderの再建に向けてビル・シュルツ氏やダン・スミス氏が加わります。

この時期に進められたのが、1950~1960年代のFenderらしさを見直す方向への転換です。

1970年代に広まった仕様を見直し、ヴィンテージモデルの魅力を再評価する流れが生まれました。

しかし、工場で製造するギターの仕様を変えるというのは、簡単な話ではありません。

昨日まで使っていた部品が大量に残っているかもしれない。

製造設備の変更も必要になる。

生産するモデル自体も整理しなければならない。

僕は、この移行期の混乱が今回のムスタングの謎に関係しているのではないかと考えています。

ムスタングは1982年に生産終了

ムスタングは、USAでの通常生産が1982年に一度終了したモデルとして知られています。

一方、同じ1982年にはフェンダージャパンが始動しています。

その後、1984年後半にはフラートン工場の稼働が停止。

1985年にCBSがFenderを売却し、新体制へ移行します。

コロナ工場が稼働するまで、USA製Fenderの生産体制は大きく変化しました。

動画では、1985年の米国カタログに日本製ギターが掲載されていたという資料も紹介しました。

こうした背景を考えると、1980年代前半のFenderは、単純に「この年式だからこの仕様」と割り切れない時代だったのかもしれません。

ただし、工場の混乱が僕のムスタングの混在仕様を生んだという直接的な証拠はありません。

ここからは、当時のモデルを比較しながら考えていきます。

1982年製USAムスタングには仕様違いが存在した?

まず比較したのは、USA製ムスタングの最終期に当たる1982年の個体です。

一般的な1982年製ムスタング

動画で紹介した一般的な1982年製個体は、1970年代後半の仕様を引き継いだものでした。

主な特徴は次のとおりです。

  • ラージヘッド
  • ストリングリテーナー2個
  • クロームボタンのFキー
  • 比較的太いフレット
  • ヘッド側のSシリアル
  • 浅いボディコンター
  • 数字付きのストラトキャスター風ノブ
  • 黒いピックガードとピックアップカバー

これだけを見ると、1970年代後半のムスタングそのものという印象です。

ところが、調べていくと別の仕様も見つかりました。

日本代理店が企画したとされる1982年製

もう一つは、日本の代理店による企画モデルとされる個体です。

こちらもラージヘッドやFキーなどの特徴を持っていますが、ノブが1960年代風になっていたり、白いピックアップカバーが使われていたりします。

つまり、1970年代後半の基本構造に、古い年代のデザインが組み合わされているんです。

この仕様は、僕のムスタングとかなり近い印象でした。

もちろん、シリアルナンバーの位置など、一致しない部分もあります。

しかし、日本市場向けに独自仕様のムスタングが企画されていた可能性は、今回の考察で重要な手掛かりになりました。

1984年にもUSA製ムスタングが存在した?

ここからが、さらに面白くなる部分です。

1982年に通常生産が終了したはずのUSA製ムスタング。

ところが調査を進めると、1984年製とされるモデルの情報が見つかりました。

山野楽器主導の20周年記念モデル?

1964年に登場したムスタングは、1984年で20周年を迎えます。

このタイミングで、日本の山野楽器が主導した特別企画モデルが存在した可能性があります。

ただし、公式資料が非常に少なく、詳細ははっきりしません。

僕が調査した際には、当時の古いチラシと思われる資料を見つけました。

そこには「1984年 ムスタング復活」と読める記載がありました。

さらに、キャンディアップルレッド、白系カラー、レイクプラシッドブルーの3色展開と読み取れる情報もあり、当時の定価は16万円と記載されていました。

ただし、これは動画制作時に確認した資料に基づく情報で、現在の時点でメーカーの公式記録と照合できたわけではありません。

シリアルも仕様も統一されていない?

さらに興味深いのが、1984年製とされる個体には、E2やE8など異なるシリアルが見られるという情報です。

もし本当なら、年式とシリアルの関係はかなり複雑です。

また、1970年代風のボディに1960年代風のノブを組み合わせた個体も紹介されていました。

これは僕のムスタングの特徴に近いものです。

そこで一つの仮説が生まれました。

僕のムスタングは、1984年頃に日本向けに特別生産されたUSA製モデルなのではないか?

この時点では、かなり有力な可能性だと感じていました。

しかし、調査はここで終わりませんでした。

フェンダージャパン初期のムスタングにも共通点がある

もう一つ比較したのが、1987年に登場したフェンダージャパンの初期ムスタングです。

動画で紹介したのは、MG69-60というモデル。

当時の定価は6万円でした。

1987年製MG69-60の主な仕様

項目MG69-60
製造国日本
ボディ材バスウッド
ヘッドラージヘッド
シリアルEシリアル
指板ラジアス7.25インチ
ボディコンター浅め
ノブ1960年代風
トレモロプレートパテントナンバーなし
当時の定価6万円

ここで気になったのが、モデル名と実際の仕様の違いです。

MG69という名称でありながら、ボディコンターは1970年代後半のムスタングを思わせる浅い形状になっています。

一方で、トレモロプレートにはパテントナンバーがありません。

つまり、こちらも特定の年代を完全に再現した仕様とは言い切れないんです。

日本向けUSAモデルが参考になった可能性

当時の日本では、Charさんの影響もあり、ムスタングには一定の人気がありました。

日本の代理店が独自仕様を企画していたとすれば、フェンダージャパンがムスタングを復刻する際に、それらのモデルを参考にした可能性も考えられます。

例えば、1982年や1984年に日本向けに企画されたUSA製ムスタング。

それらの仕様が、後のフェンダージャパン製ムスタングに何らかの形で受け継がれたとしたら?

僕のムスタングに見られる仕様の混在も、単なる偶然ではないのかもしれません。

ただし、これもあくまで仮説です。

フェンダージャパンの開発資料などで確認できた話ではありません。

TC楽器で聞いた、このムスタングの内部事情

ここで、購入したTC楽器で聞いた話を紹介します。

対応してくださったのは松井店長です。

購入時に、この個体についていろいろと話を聞かせてもらいました。

ボディ・ポット・ピックアップは1978年製と見られる

お話によると、ボディやポット、ピックアップなどは1978年製と見られるとのことでした。

ピックアップには、いわゆるグレイボビンが搭載されています。

一方で、ネックについては年代を判断するための記載が消えており、正確な判別ができないとのこと。

さらに、半田付けなどを確認しても、後年に大規模なパーツ交換をしたような明確な痕跡は見当たらなかったそうです。

つまり、見た目は特殊ですが、単純な寄せ集め改造ギターと判断できる状況でもないわけです。

長年の経験でも珍しい個体

松井店長からは、長年ギターを扱ってきた中でも、このような個体は初めて見るかもしれないという趣旨のお話もありました。

当初は日本製ではないかと思われたものの、内部を確認すると、その見立てとも異なっていたそうです。

そして、日本市場向けに特別オーダーされた個体かもしれない、という可能性も挙げられました。

現在でいうFender Special Run、いわゆるFSRのような企画をイメージすると分かりやすいかもしれません。

もちろん、今回の個体が正式にそうした企画で作られたと確認できたわけではありません。

なぜ22万円だったのか?

購入価格は22万円でした。

動画制作当時、1970年代後半のアッシュボディのUSA製ムスタングは、30万円前後の価格が付く個体もありました。

それに比べると、22万円は少し安く感じます。

ただし、その理由も聞いて納得しました。

製造年や仕様について確証が持てないため、価格を抑えているということでした。

ヴィンテージギターの価格は、状態だけでなく、製造年やオリジナル性をどこまで証明できるかにも左右されます。

今回のムスタングは、そこがはっきりしない個体だったわけです。

さらに謎が深まる!シリアル差わずか26番のムスタングを発見

1984年説が有力かもしれない。

そう思い始めていたところで、さらに驚く情報が見つかりました。

島村楽器の中古販売ページで、1988年製USAムスタングとされる個体を発見したんです。

しかも、僕のムスタングと驚くほど近いシリアルナンバーでした。

シリアルナンバーの差は26番

個体シリアルナンバー
僕のムスタングE840214
1988年製とされる個体E840188

差は、わずか26番。

これはかなり気になる情報です。

シリアル番号が近いからといって、必ずしも製造日が近いとは限りません。

それでも、これほど近い番号の個体が存在するという事実は無視できません。

仕様にも多くの共通点がある

発見した個体にも、次のような特徴がありました。

  • アッシュボディ
  • ラージヘッド
  • クロームのFキー
  • ストリングリテーナー2個
  • ネックプレートのEシリアル
  • パテントナンバー入りトレモロプレート

僕のムスタングと共通する部分が非常に多いんです。

しかし、完全に同じ仕様ではありません。

一方で、外観はかなり違う

発見した個体は、黒いピックガードとピックアップカバーを備え、ノブも1970年代後半のストラトキャスター風。

重量は4kgを超えていました。

一方、僕の個体は白系のパーツ、1960年代風のノブ、重量3.59kg。

シリアルは近いのに、外観や仕様には明確な違いがあります。

ここで、1984年説だけでは説明しきれない状況になりました。

E8シリアルなら1988年製なのか?

Fenderのシリアルナンバーの一般的な読み方では、E8は1988年を示すものとされています。

そのため、僕のムスタングも1988年製という可能性はあります。

しかし、ボディや電装系が1978年製と見られること、そして1982年にムスタングの通常生産が終了していることを考えると、単純には結論を出せません。

当時の余剰部品を使ったのか。

日本向けの特別オーダーだったのか。

それとも、まだ知られていない少数生産の個体なのか。

謎は深まるばかりです。

このムスタングの正体について、僕が考えた4つの仮説

ここまで調べた内容を踏まえて、僕なりに4つの可能性を考えました。

仮説① 1982~1984年頃のUSA最終期モデル

まず考えられるのが、1982年から1984年頃に作られた、CBS期末期の仕様を残すUSA製ムスタングという可能性です。

1970年代後半のアッシュボディやラージヘッドを基本としながら、一部に1960年代風のパーツを採用した個体。

今回のムスタングの特徴を比較的説明しやすい仮説です。

ただし、E8シリアルをどう考えるかという問題は残ります。

仮説② 日本代理店の特別オーダーモデル

次に、1984年頃に山野楽器など日本の代理店が特別オーダーしたモデルという可能性です。

当時、日本ではCharさんの影響もあり、ムスタングへの需要がありました。

通常生産が終了していたとしても、日本向けの特別企画として少数生産された可能性は考えられます。

もしそうなら、通常のカタログモデルと仕様が違っていても不思議ではありません。

ただし、この個体と当時の代理店企画を直接結び付ける資料は見つかっていません。

仮説③ フェンダージャパン復刻につながる過渡期の仕様

3つ目は、後のフェンダージャパン製ムスタングにつながるような仕様だったという可能性です。

1982年や1984年の日本向けUSAモデルが、1987年のMG69-60などの参考になったのではないか。

そう考えると、仕様に共通点があることにも説明が付きます。

ただし、これも開発上のつながりを確認できたわけではありません。

仮説④ 余剰パーツを使用したスポット生産品

最後は、当時の在庫パーツを組み合わせて生産された個体という可能性です。

1980年代前半のFenderは、製造体制や会社の経営が大きく変化していた時期です。

旧仕様の部品が残っていたとしても不思議ではありません。

日本向けの注文などをきっかけに、そうしたパーツを使用して少数のムスタングが組み立てられたのではないか。

もしこれが事実なら、シリアルが近い個体同士でも仕様が異なることを説明できるかもしれません。

ただし、現時点では製造記録による裏付けはありません。

僕自身は、これらの可能性が一つだけ正しいというよりも、複数の事情が重なって生まれた個体なのではないかと考えています。

実際に弾いてみた!謎のUSAムスタングのサウンド

ここまで歴史や仕様の話が続きましたが、ギターである以上、実際の音も重要です。

動画では、センターポジションを中心に、クリーン、クランチ、ドライブ、そしてフェイズアウトサウンドを試奏しました。

ピックアップの出力はかなり低い

まず驚いたのが、ピックアップの出力です。

かなり弱い。

率直に言えば、歪みにくいギターだと感じました。

現代的な高出力ピックアップを搭載したギターとは、明らかに方向性が違います。

強い歪みを簡単に作りたい人には、あまり向いていないかもしれません。

テレキャスターとは違う硬質なサウンド

一方で、音自体には独特の魅力があります。

僕が所有しているテレキャスターとは違う、ジャキッとした硬質な音です。

特に、歪ませたときの音には独特の表情があります。

少し荒々しく、きれいにまとまりすぎない感じ。

このあたりは、個人的にかなり好きです。

アッシュボディが音に影響している可能性もありますが、木材だけでサウンドを説明できるものではないと思います。

あくまで、この個体を弾いたときの印象です。

太いネックは、正直弾きやすくない

ただし、弾きやすさについては手放しで褒められません。

ネックが太く、僕にとっては少し扱いにくいです。

現行のムスタングのほうが、一般的には扱いやすいと感じる人も多いのではないでしょうか。

僕自身、弾きやすさだけで選ぶなら、別のギターを選ぶと思います。

万能性ではProvidence DS-205のほうが上

以前所有していたProvidence DS-205と比較しても、汎用性ではProvidenceのほうが高いと感じます。

もし「1本だけギターを持つならどちらを選ぶか」と聞かれたら、実用性ではProvidenceを選ぶでしょう。

それくらい、このムスタングには癖があります。

しかし、癖があるからこそ面白い。

万能なギターが必ずしも、自分にとって一番魅力的なギターとは限りませんからね。

なぜ僕は、このムスタングを買ったのか?

ここまで読んでいただくと、疑問に思う方もいるかもしれません。

製造年が分からない。

仕様も特殊。

ネックも決して弾きやすくない。

ピックアップの出力も低い。

それなのに、なぜ22万円を出して購入したのか?

理由はいくつかあります。

転職という人生の節目だった

このムスタングを購入した当時、僕は転職という人生の節目を迎えようとしていました。

そこで、自分にとって意味のあるギターを1本買いたいと考えていたんです。

探していたのは、1980年代後半頃のギター。

ちょうどその頃のモデルを調べている中で、TC楽器にあったこのムスタングを見つけました。

YouTube収益と機材整理も購入を後押し

購入資金についても、YouTubeの収益や機材整理で得たお金がありました。

もちろん、22万円は決して安い金額ではありません。

それでも、以前から気になっていたムスタングであり、人生の節目に購入するギターとして魅力を感じたんです。

決め手は、このギターが持つ物語性

最終的に僕が惹かれたのは、サウンドやスペックだけではありません。

このギターが持つ、物語性です。

なぜこのシリアルナンバーなのか。

なぜ1960年代と1970年代の仕様が混ざっているのか。

本当に1984年製なのか、それとも1988年製なのか。

当時のFenderで、どのような経緯を経て作られたのか。

調べても簡単には答えが出ない。

むしろ調べるほど謎が増えていく。

そうした部分も含めて、このムスタングが気に入ってしまったんです。

ギターという楽器は、音だけで価値が決まるものではないと思います。

見た目、弾き心地、憧れのアーティスト、製造された時代、そして自分が手に入れたときの思い出。

そういったものが積み重なって、特別な一本になるのではないでしょうか。

まとめ|1984年製か1988年製か。答えが出ないことも、このギターの魅力

今回は、僕が所有する謎のUSA製ムスタングについて考察してきました。

調査で分かったことを整理すると、以下のようになります。

  • 所有個体は1980年代製のUSA製ムスタングと推定される
  • シリアルナンバーはE840214
  • ボディや電装系には1978年製と見られるパーツが使われている
  • 1960年代と1970年代後半の仕様が混在している
  • 1984年に日本向け特別企画のムスタングが存在した可能性がある
  • シリアルが26番しか違わない1988年製とされるUSAムスタングも発見した
  • しかし、正確な製造年やモデルの正体は確定していない

僕自身、調査を始めた頃は、ある程度簡単に答えが出ると思っていました。

しかし、実際にはそうではありませんでした。

1980年代のFenderの歴史を調べ、日本向けの特別モデルを調べ、初期フェンダージャパンの仕様まで比較してみても、完全に説明できない部分が残っています。

それでも、このギターを買って良かったと思っています。

確かに、弾きやすさや汎用性では、もっと優れたギターがあります。

しかし、このムスタングには、それだけでは測れない魅力があります。

ギターを所有する楽しさは、必ずしもスペックや演奏性能だけではない。

そんなことを改めて感じさせてくれた一本でした。

このムスタングについて情報をお持ちの方へ

もし1984年製、1988年製とされるUSA製ムスタングについて詳しい方がいらっしゃいましたら、ぜひ情報をお寄せください。

特に、E8シリアルのUSA製ムスタングや、1980年代に日本向けに企画されたモデルについての情報を探しています。

いつかこのギターの正体が分かり、「実はこういうモデルでした」と報告できたら面白いですね。

それでは、タキタロウでした。

■引用・参考

・ギターマガジン 2021年5月号/リットーミュージック
・ギターマガジン 2018年1月号/リットーミュージック
・Fender ’70s Guitar Guide/三栄ムック
・ムスタング・オーソリティ 狙えるミドル・クラス・ヴィンテージ フェンダー“ムスタング”のすべて /シンコー・ミュージックMOOK YOUNG GUITAR specia)

・High Hopes Guitar‘s 様
https://9459751101.amebaownd.com/posts/7844980/

・島村楽器 アミュプラザ博多店様https://www.shimamura.co.jp/shop/hakata/article/product/20221221/11208

・Charley Yang様 note記事
https://note.com/room843/n/n7779bf147eb7

・FenderMustangStory.com
https://www.fendermustangstory.com/gphotos/1984Mustang.html

・OffsetGuitars フォーラム
https://www.offsetguitars.com/forums/viewtopic.php?t=87793